フランス第二の都市リヨンは、美食の街として知られる一方、16世紀のヨーロッパ政治と宗教対立の舞台でもありました。
フランス王家ブルボン家と、神聖ローマ帝国を率いたオーストリア・ハプスブルク家。
両者の緊張関係は、宗教改革と宗教戦争の時代にフランス国内へも大きな影響を与えます。
本記事では、リヨンがこの歴史的対立の中で果たした役割に注目しながら、旧市街や大聖堂、美術館を中心に「歴史を感じるリヨン観光」を紹介します。
⚫︎リヨンの歴史的役割
・フランスとハプスブルクの狭間で
リヨンは、単なる地方都市ではなく、フランス王国とオーストリア・ハプスブルク家の覇権争いの中で、軍事的・経済的に極めて重要な役割を担った都市でした。
15〜16世紀、神聖ローマ帝国が最盛期を迎える時代。
リヨンはヨーロッパ有数の商業・金融都市として発展し、フランス国内における経済の中心地のひとつとなります。
この街はフランス王国の都市でありながら、ハプスブルク家が支配するイタリア(特にミラノ)やネーデルラント地方と密接な交易関係を持ち、ヨーロッパ全体の商業・金融ネットワークの中核として機能していました。
当時のリヨンには、フィレンツェやジェノヴァといった、ハプスブルク家と関係の深い都市の銀行家たちも集まり、国境や王権を超えた経済活動が行われていました。
中でも特筆すべき存在が、アウクスブルクの大銀行家フッガー家です。
フッガー家は、神聖ローマ皇帝カール5世(ハプスブルク家)の財政を支えたことで知られ、リヨンにも拠点を構え、フランス王国とも取引を行っていました。
しかし、フランスとハプスブルク家の戦争が激化するにつれ、リヨンは単なる交易都市ではいられなくなります。
ハプスブルク家は、経済制裁や交易封鎖によってリヨンを締め付け、その国際貿易は大きな影響を受けることになります。
1494年から1559年まで続いたイタリア戦争では、リヨンはフランス軍の重要な補給基地として機能し、軍事面でも戦略的価値を持つ都市となりました。
この戦争を経てフランスが優位を確立すると、リヨンはフランス王国の一部として安定し、18世紀には王国を代表する主要都市のひとつとして発展していきます。
こうした背景を知った上で街を歩くと、リヨンの大聖堂や旧市街、美術館が、ヨーロッパ史の大きな流れの中で存在してきたことが、より鮮明に感じられるはずです。
・リヨンとブルボン家・ハプスブルク家の歴史的背景
16世紀のヨーロッパでは、カトリックを守るハプスブルク家と、フランス王権を強化するブルボン家が勢力を争っていました。
フランス国内では宗教改革の影響により、カトリックとプロテスタントの対立が激化。
リヨンは商業都市として栄え、政治・宗教の影響を強く受ける拠点となります。
・リヨンとブルボン家・ハプスブルク家の対立を感じられる場所
サン・ジャン大聖堂
宗教対立の時代を象徴する場所

サン・ジャン大聖堂 外観

サン・ジャン大聖堂 内部

リヨン天文時計
リヨン旧市街の中心に位置するサン・ジャン大聖堂は、中世から近世にかけてリヨンの宗教的中心地でした。
宗教改革と対抗宗教改革の時代、この大聖堂はカトリック側の象徴として重要な役割を果たします。
荘厳な内部空間に身を置くと、当時の宗教的緊張や、フランスとハプスブルク家の関係性に思いを巡らせることができます。
リヨン美術館
政治と宗教を映す16〜17世紀の美術

リヨン美術館

リヨン美術館中庭

ゴーギャンの絵画
「ナヴェ・ナヴェ・マハナ」
旧市街近くにあるリヨン美術館は、かつてサン・ピエール王立修道院として使用されていた歴史ある建物です。
館内には16〜17世紀の絵画作品が多く収蔵され、フランス王権、宗教、ヨーロッパ情勢を背景とした作品も見ることができます。
ポール・ゴーギャンなど世界的画家の作品も展示されており、芸術を通して歴史を理解できる場所です。
ここは広いので沢山歩きます。
疲れたら中庭に出て、休憩するのがおすすめです。
ベンチが沢山ありました。
※入場チケットは、公式オンラインサイトでの事前購入が便利でした。
ベルクール広場
王権を象徴するルイ14世像

ベルクール広場

「星の王子さま」のモニュメント

ルイ14世の騎馬像
リヨン中心部に広がる、ベルクール広場。
中央に立つのは、ブルボン家の象徴とも言えるルイ14世の騎馬像です。
王権の絶対性を示すこの像は、フランスが国内外の対立を経て中央集権国家へ向かう過程を象徴しています。
広場の端っこには、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリと彼の代表作『星の王子さま』をモチーフにした像があります。
あまりに端っこすぎて、見つけるのに苦労しました。
サン=テグジュペリはリヨン出身であり、この像は彼が自身の作品のキャラクターの隣に座っている姿を、描いています。
リヨン旧市街
16世紀の空気を色濃く残す街並み

トラブールのドア 内側

トラブールのドア 外側

トラブール

「バラ色の塔」
(メゾン・デュ・クリブル)
世界遺産にも登録されている「リヨン旧市街」には、15〜17世紀の建築物が数多く残されています。
宗教戦争と政治的緊張が続いた16世紀、この地区もその影響を強く受けました。
この歴史的抜け道は、かつては絹織物職人が商品を雨に濡らさずに、運ぶために使われてたといわれます。
一見普通の民家の扉に見えますが、中を通り別の通りへと通り抜けられる様になっています。
第二次世界大戦中には、レジスタンスの逃げ道としてもつかわれたとか。
石畳の路地やトラブール(抜け道)を歩くことで、当時の人々の暮らしと、不安定な時代背景を体感できます。
トラブールはを探しながら、旧市街を歩くのは、とても楽しかったです。
ドアが閉まっているところもあるので、開けてみるのにも勇気が必要です。
でも、入ってはいけない所は、鍵がかかっているか表示がありますので、心配しすぎなくても大丈夫です。
・その他の見どころ(歴史と街歩き)
リヨン市庁舎

リヨン市庁舎
17世紀建てられた、壮麗なバロック様式の建築物で、リヨンを代表する歴史的な建築物です。
内部見学は不可。
1674年の大火災の後、ヴェルサイユ宮殿を手がけたことで有名な、国王お抱えの建築家“ジュール・アルドゥアン=マンサール(Jules Hardouin-Mansart)”らによって現在の豪華なファサードへと修復されたとの事。
納得です。
市庁舎とは思えない豪華さでした。
ノートルダム・ド・フルヴィエール大聖堂

ノートルダム・ド・フルヴィエール
大聖堂

ノートルダム・ド・フルヴィエール
大聖堂 中

ノートルダム大聖堂広場からの朝日
街の象徴としてしたしまれとおり、ユネスコ世界遺産「リヨン歴史地区」の一部にあります。
白い美しい外壁が印象的です。
外観は、①力・②慎重・③正義・④節制の塔という事です。
“節制”が入っている4本柱、なんだか面白いですね。
入場無料で、庭園からの眺望も素晴らしいです。
私たちは朝日に出会うために、早朝ホテルを出発。
行きはケーブルカーとバスを乗り継いで、帰りはバスの時間が無かったので、徒歩で下りました。
長く歩くのが不安な方は、あらかじめバスの時間をチェックしておきましょう。
古代ローマ劇場

古代ローマ劇場

古代ローマ劇場 上から

古代ローマ劇場 下から
約2,000年前に建設された野外劇場。
博物館とローマ浴場跡も併設され、ローマ帝国時代のリヨンを体感。
私達は、早朝のノートルダム大聖堂観光からの帰り道の途中に(徒歩)、この「古代ローマ劇場」を偶然みることができました。
歩いてよかったー
クロワルースの丘

カニュの壁画(トロンプ・ルイユ)

クロワルースの丘からの眺め
絹織物職人たちが暮らした街です。
だまし絵(トロンプ・ルイユ)が点在しているらしいですが、私たちは大きいもの一つしか見つけられませんでした。
私たちは、メトロを使ってここへ来ましたが、ホームが何階にもありそれぞれ行き先がちがうので、注意が必要です。
私たちは、最初は出発ホームがわからずに、何回も行ったり来たりしてしまいました。
テロー広場

テロー広場
リヨン市庁舎前の広場テロー広場は、世界遺産「リヨン歴史地区」の中心にある人気スポットです。
17世紀建築の美しい市庁舎や、「自由の女神」の作者バルトルディによる迫力ある噴水が見どころ。
周辺には美術館やカフェやベーカリーも多く、おいしいカジュアルレストランもありました。
観光の合間の休憩に、ぴったりのエリアです。
リヨンのベーカリーについてはこちら⬇️
リヨン ベーカリーのパンとフランスベーカリー文化
リヨンのレストランについてはこちら⬇️
リヨンの食文化とおすすめレストラン2選
サン・ニジエ教会

サン・ニジエ教会

サン・ニジエ教会のパイプオルガン
サン・ニジエ教会は、リヨン中心部にある中世の歴史を感じられる教会です。
5世紀頃のキリスト教墓地を起源とし、現在の建物は14〜15世紀に再建されました。
左右でデザインの違う2本の塔が特徴で、ゴシック建築の美しさを楽しめる人気スポットです。
リヨン市場(レ・アル・デ・リヨン・ポール・ボキューズ)

市場外観

市場内のお店
リヨン市場では、新鮮な地元食材が豊富に揃っています。
数多くの食材が立ち並び、まさに美食の街リヨンらしさが詰まっています。
市場を歩くだけで楽しく、観光としても十分価値がありますが、価格はスーパーと比べてやや高め。
高級志向の店舗が多く、観光客向けの印象もあり、私達は見て楽しむことを中心にしました。
リヨンで楽しんだスーパーと市場についてはこちら⬇️
リヨンのスーパー・市場|シニア旅行で楽しむフランス地元グルメ体験
リヨン国立オペラ座

オペラ座
リヨン国立オペラ座は、歴史ある石造りの建物に、近代的なガラスドームを組み合わせた個性的な建築です。
内部は「黒を基調とした近未来的なデザインで、外観との違いも見どころ」とのことでしたが、内部見学はツアーのみ。
私たちはツアーの時間が合わずに、残念ながら外観のみの見学でした。
市庁舎の向かいにあり、観光中にも立ち寄りやすい場所です。
⚫︎まとめ|リヨンは「歴史を歩く」観光都市
リヨンは単なる観光地ではなく、ブルボン家とハプスブルク家、宗教改革と王権の歴史が交差する街です。
旧市街や大聖堂、美術館を巡ることで、16世紀ヨーロッパの緊張感を、今もなお感じることができます。
歴史好きの方には、ぜひ「物語を読み解く視点」で歩いてほしい街です。
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リヨンのチョコレートについて⬇️
リヨンのチョコレート巡り:おすすめショコラティエ5選
を別記事でご紹介しています。
ぜひ、そちらもチェックしてみて下さいね。

